2015年5月アーカイブ

未来

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オランダ語の先生が、オランダの作家シモン・カーミヘルト(1913-1987)の文章を、初心者向けに短くして送ってくれた。ちいさな未来の話だった。日本語でもシェアしたかったのでブログに書いた。以下が私の日本語訳だ。

Simon Carmiggelt  "Toekomst"

シモン・カーミヘルト 「未来」

私の6歳の孫が、家に泊まりにきた。決められた時間だけテレビを見て、お風呂ではしゃぎ、ぬれた髪でベッドに入るとこう言った。 「おじいちゃん、おばあちゃん、こっちに来て?」

私たちは行って、ベッドの端に座った。彼はこう聞いた。

「おじいちゃん明日もまたひげを剃る?」

「ああ。」

「もしひげを剃ったら、おじいちゃんは少し小さくなるね。」と彼は言った。「どうして年を取った人はそんなに小さいの?」

「縮むんだ、たしか」

彼は信じられないという様子だ。

「僕が80歳になったとき、おじいちゃんたちは何歳なの?」と聞いた。

「134歳だ、でも人はそんなに年を取ることはできないよ。」

彼もそのことは分かって、数字を少し低く設定し直した。「じゃあ僕が26歳になったら?」

「そうしたら私たちは80歳だ。」

そう答えたとき、私は何だか怖いような気がした。

でも彼は私たちをなぐさめた。「僕は電車の運転手になるよ。だって僕は2つの車両をどうやって連結させるのか知ってるから。」と言った。

「そうしたら、おじいちゃんとおばあちゃんはいつでも一緒に乗ってきていいよ。10セント(15円)で乗っていいよ。駅で、僕のおじいさんですって言えばいいよ、そうしたら乗れるよ。でもそのかわり、なにか僕の好きな食べ物を持ってきてよ。」

「チューインガム?」妻が聞いた。

それが彼の好物だからだ。

「違うよ。僕が26歳になったときに好きな食べ物だよ。僕、何が好きだと思う?」

私たちがすぐに思いつけないでいると、彼は自分で答えた。「青エンドウ豆が好きになるよ。だからそれを持ってきてね。温かい鍋に入れといてね、電車の中で食べるから。」

私たちはそれを約束して、彼におやすみのキスをした。

そして私たちがベッドの横にいると、彼は、なにか勇気を出すといった調子でこう言った。

「もし、おじいちゃんとおばあちゃんが、すごく小さくなっちゃったらね、僕が世話してあげる。僕はもう結婚していて、子どもは一人だけ買うよ。だって子どもはすごく高いからね。おじいちゃんたちには、靴の箱を作ってあげる。住むためのだよ。もしおじいちゃんたちがすごく小さくなったら、そこに住めばいいよ。箱の中にはドアも作るよ、それから空気穴もあけてあげる。休暇のときには車に一緒に乗っていいよ。箱は後ろの席の棚の上の、猫のとなりに置いてあげる。いい考えでしょ?」

「ああ、いいね。」

私たちは明かりを消した。
そしてリビングルームに戻った。2人の人間がひとつの未来と一緒に。

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