アールスマン・コレクティ (偽グラフ)

私は金利というものに縁もないが、新聞でこの写真を見たときは驚いた。

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2016年1月29日東京、日銀黒田総裁によるマイナス金利会見。
このどす黒い赤色の中にいる黒田氏、変じゃないだろうか。

これは日銀総裁のマイナス金利会見をオランダの新聞フォルクス・クラント (Volkskrant)が見開きで紹介したわけではなく、フォルクス・クラントに毎週木曜日に連載されているアールスマン・コレクティ(Aarsman collectie=アールスマン・コレクションの意)からの写真だ。
アールスマン・コレクティとは。オランダ人写真家/文筆家であるハンス・アールスマン(Hans Aarsman)が毎週世界中の報道写真から1枚を選び、そこに写っているものを「よく見て」コメントするという連載だ。「よく見る」ためには写真は見開き大でなくてはいけない。
ハンス・アールスマンの初期の活動は、新聞に写真を提供する写真家であったが、今は「写真探偵」として写真を「よく見て」コメントする連載を新聞でやっている(これは人気があり、何冊か本になっている他ライブで全国ツアーなどもやる)ほか、表やグラフという硬そうな素材をユーモラスに使った作品で知られている。ライクスアカデミーのアドヴァイザーでもあったので、私は何度か会った。

以下私の訳で申し訳ないが、この不気味な写真へのアールスマンのコメントを書き出してみたい。

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日本銀行総裁、黒田東彦がマイナス金利について説明する。2016129日、東京。写真ユウヤ・シノ/ロイター


世界中の記者会見会場がそうであるように、この会場にも光がある。天井の蛍光灯、窓からの太陽光、撮影用の照明。それらは全くの役立たずではない。会場に光がじゅうぶんにある時、写真家はフラッシュを焚かずに写真を撮れる。少しぐらいフラッシュが焚かれるのは別に悪くはないが、とにかくフラッシュというものはいつでもひどく邪魔なものだ。


どのような光をあてればこんな真っ暗な写真を撮れるだろうか?(じゅうぶん光がある中でも)もったいぶってフラッシュの光をあてれば可能だ。実際、同じ効果はアマチュア用カメラ(コンパクトデジカメ等)でも撮れる。パーティーや祝いの席の写真でよく知られているように、周囲の光が抑えられた場所で写真を撮れば、前景は焦げ付くほどのストロボの光を受け、背景は暗くなる。

これも同じ効果だろう。ただ、フラッシュの光はカメラからではなく別のところから来ている。ケーブルかセンサーでリモコン操作できる強い光源を左側に置いておく。それを焚く。


他の方法もある。カメラを三脚で立て、シャッターを開け、絞りを絞ってほとんど光が入らないようにしておき、誰か隣の同業者がフラッシュを焚くまで待つ、光があるにもかかわらず焚かれるやつだ。


複雑すぎるか?否、このグラフの描かれたボードのように単純なことだ。


ここにx軸、y軸、z軸の三次元で表された座標がある。質、量、マイナス金利、これらにどういうつながりがあるのか?図(グラフィック)でそれを分かるように表示しなくてはいけないのだが、図はない。ここはもっと描き加えられていなくてはいけない。日本銀行の総裁が描くのだろうか?彼は光の中の吸血鬼のように見える。テーブルの上にはマイク、水、小さなレコーダーが見えるのみでフェルトペンは置かれていないようだ。


このボードの後ろに人が座っているのがあなたには見えるだろうか?彼の、ピンストライプ柄の布のジャケットの両腕が突き出ている。この人物が次に図がちゃんと描かれたボードを出してくれるのかもしれないじゃないか。


インターネットで見てみよう。英語圏の報道ではこの座標をつかった記者会見の非常に短い抜粋が見られるが、ここでも図はでてこない。オランダの報道と同じだ。日本語の報道では1時間ほどのこの記者会見の完全版がみられた。この、次に図がちゃんと描かれたボードを出すために控えているはずのピンストライプ人間は、何か数字の描かれたボードを出したのちにすぐまたもとの座標のボードに戻してしまった。


私たちはこれを「偽(にせ)グラフ」、と呼ばなくてはいけないだろう。古い考え方をするなら、経済について何か理解できるのは偉大な学者たちだけで、彼らにとんでもなく高い給料を払わなくてはさじを投げられる。そうではない。経済については誰も何か分かるわけではない。ものごとは相互に複雑に影響しあっており、日銀による介入がうまくいくかどうかは、純粋に運なのだ。"



訳はもう少し改善していこうと思う。

連載の写真はこちらでちゃんとしたものを見たほうが楽しい。

Aarsmancollectie160205

選ばれた写真を見るのはとても面白い。


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このページは、tomokoが2016年2月17日 22:20に書いたブログ記事です。

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